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福井地方裁判所 昭和61年(行ウ)2号 判決

福井県鯖江市水落町四丁目一一番一四号

原告

黒田輝幸

右訴訟代理人弁護士

八十島幹二

吉川嘉和

吉村悟

福井県武生市中央一丁目六番一二号

被告

武生税務署長

山本勝久

右指定代理人

畑中英明

遠藤孝仁

直井勝美

酒井史郎

谷口昌平

堀江清

玉川勢雄

田中信太郎

主文

一  本件訴えをいずれも却下する。

二  訴訟費用は、原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告が、昭和五八年二月二八日なした原告の昭和五五年分の所得金額を金六〇八万一〇〇〇円とし、納付すべき税額を金八〇万八八〇〇円とする更正処分のうち納付すべき税額金三万二一〇〇円を超える部分及び過少申告加算税金四万〇四〇〇円の賦課決定並びに原告の昭和五六年分の所得金額を金七八九万一〇〇〇円とし、納付すべき税額を金一三〇万一五〇〇円とする更正処分のうち納付すべき税額金五万六六〇〇円を超える部分及び過少申告加算税金六万五〇〇〇円の賦課決定は、いずれもこれを取り消す。

2  訴訟費用は、被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

1  本案前の答弁

主文同旨

2  本案の答弁

(一) 原告の請求をいずれも却下する。

(二) 訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求の原因(原告)

1  被告は、請求の趣旨第1項記載の各処分(以下「本件各処分」という。)をなした。

2  原告は、本件各処分を不服として、被告に対し、昭和五八年三月一八日、異議申立をしたところ、被告は、同年六月一四日付で異議申立を棄却する決定をした。

原告は、なお不服があるとして国税不服審判所長に対し、同年七月一四日、審査請求をしたところ、同所長は、昭和六一年六月二日、右請求をいずれも棄却するとの裁決(以下「本件裁決」という。)をなし、原告は、同月三〇日、その通知を受けた。

3  本件各処分は、いずれも違法である。

よって、原告は、本件各処分の取消しを求める。

二  本案前の主張(被告)

原告が、国税不服審判所長に対し、昭和五八年七月一四日付でなした、本件各処分についての審査請求に対する本件裁決は、昭和六一年六月二日になされ、本件裁決書謄本は、同月二六日に原告に送達されているにもかかわらず、原告が本件訴えを提起したのは、右裁決書謄本の送達から三か月を経過した後である昭和六一年九月二八日である。したがって本件訴えは、行政事件訴訟法一四条一項所定の出訴期間を経過した後に提起されたものであることが明らかであるから、不適法であり、却下されるべきである。

三  請求の原因に対する認否(被告)

1  請求原因1について

認める。

ただし、請求の趣旨1の納税額の「金八〇万八八〇〇円」とあるのは「金八五万三九〇〇円」、同「金一三〇万一五〇〇円とあるのは「金一三五万八一〇〇円」が、それぞれ正しい。

2  同2について

原告が昭和六一年六月三〇日本件裁決の通知を受けたとの点は否認し、その余は認める。

3  同3について

争う。

第三証拠

証拠関係は、本件記録中の書証目録記載のとおりである。

理由

一  まず、被告の本案前の主張(出訴期間徒過)について検討する。

その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから真正な公文書と推定すべき乙第一号証の一ないし三によれば、本件各処分についての審査請求に対して、昭和六一年六月二日になされた本件裁決の裁決書謄本は、同月二六日に原告に送達されたことが認められ、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

右裁決書謄本が原告に送達された以上、特段の反証のない本件においては、右送達の日に原告自身が本件裁決を現実に了知したものと推認するのが相当である。

そして、本件訴えの提起は、原告が、右本件裁決を了知した日から三か月を経過したのちの同年九月二八日であることは、記録上明らかである。

二  よって、原告の本件訴えは、その余の点について判断するまでもなく、行政事件訴訟法一四条一項に徴し不適法であるから、いずれも却下することとし、訴訟費用の負担につき同法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 横山義夫 裁判官 園部秀穂 裁判官 白石哲)

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